吹きすぎた風に、わずかな温みを感じる季節。 越前藩王は城の窓から我と我らの国に視線を巡らして思う。 (もう、春か) ナショナルネットを通じて官吏の面々を召集し、半顔を覆う鉄仮面ごしにもわかる機嫌のよい声で言った。 「春だ。祝いを一席設けるとしよう、桃の節会、いわゆるひなまつりだ…そうだな、一晩中の祭としよう!資金確保のために、他の藩国へも宣伝の触れを出してはどうだ?」 そうして勅令は発された。 皆、その思いつきのような勅令が、常より戦時下の状況のなか、藩王よりの労いの気持ちである事を心得て祭にのることにした。 一部、内心で算盤をはじいて、どれくらいの規模の宴ができるかを瞬時に考え頭を悩ませる臣下もいたが、彼らもまた、笑顔ではあった。 常々、楽しみを見いだすことを忘れない(ある意味お祭り好きな)国民性は、越前藩国の特色のひとつである。 そして。 『越前藩国雛祭』 藩国に伝わる宝物蔵より、雛祭限定公開の伝統装束をまとっての、入内行列と等身大雛壇。 (※参加ご希望の方は、当日受付までお申し出ください。なお、衣装には限りがあるため、参加は抽選となります) 天下に冠たる米処・越前で醸した、白酒・甘酒のふるまい。 三色団子や餅をメインに、様々な夜店が並ぶ夜市。 ※ぜひあなただけの素敵なお土産をお探しください。 藩国を縦に流れる天野川をゆったりと小舟で下る川下りと、途中の岸辺や小道にまであちこちに飾られた淡いぼんぼりの、水面に映る風情ある景色をお楽しみください。 風に揺れるさげ飾りに誘われての、そぞろ歩きも粋なもの。 ゆったりとした、春の宵。時の流れに酔いしれて… 『そうだ、越前行こう』 『ディスカバー越前』 そんな内容とキャッチフレーズの観光案内パンフレットが、各国に届けられた。