賢者S43は小笠原にボラーが出現すると予想し、帝國に助言した。 帝國陸軍は対ボラーの作戦立案と偵察を開始する。 そして帝国ナンバー2の人口を誇る弱小国こと越前藩国にも偵察兵提出の要請が届いた、その数15人 偵察対象のボラーは、それなりの品格(根源力)を持つ存在以外は、相対しただけで死を振りまく相手、越前で対応できるのは 刀岐乃 SEIRYU ガロウの僅か三名のみ、すなわちこの要請はボラーの所在を調べるのと引き換えに偵察部隊の命を支払う非情の命令だった 越前藩国藩王セントラル越前はこの要請に激怒した 「全ての国民は我が。そして我らが越前藩国の財産である 如何なる理由が有ろうと我が藩国に死んで良い国民など1人もいない」 だが、そうは言ってもボラーに対応できる実力者だけで偵察部隊を編成できない以上、少々の犠牲は目をつぶるしかなく、越前だけが犠牲を出すのも間違っているが、越前だけが犠牲を出さないというのも通る話しでは無く 苦しい立場の帝國参謀本部と越前藩国の折衝の結果、4小隊小隊長として「刀岐乃」そして小隊員「月」「クレージュ」「S山崎」の合計4名が選出される事となった 越前藩王苦渋の決断である そして偵察前夜、S山崎の部屋に二名の来客 「すまない、我々の手落ちだ」 道化の仮面と怪しい風体ながら優れた参謀能力を持つ史族、佐倉真は開口一番そう謝罪した 「お前の見立てで生還の見込みはあるか?欲しい物は無いか?遺族年金は誰宛にしてたっけ?」 一緒に来ていた新摂政、黒埼が質問を投げかける 「貴様は情報が欲しいのか、気を使ってるのか 事後処理を済ませたいのか、どっちだ」 腐れ縁の友人へツッコミを入れると山崎は二人を部屋に招き入れ、自らの名の由来でも有る東国産のウイスキーを来客に振るまうと、自らのグラスにも琥珀色の液体を注ぎ一口飲む 佐倉はグラスに口をつけず、後悔と憤慨の色が見えた、S山崎は苦笑して語りかける 「しかし…アレだ、越前藩王にしろ佐倉にしろ苦労性な事だな、総大将の藩王や時間も金も掛かってる精鋭に比べれば、私なんぞはいくらでも取り替えの利く駒だ、遠慮無く使い捨ててくれれば良い、上に立つ者には、それぐらいの割りきりは必要とも思うが?」 そうは言われても納得できない佐倉はグラスを一息に呷る 「私は参謀ではない故、会議に口を挟む資格も無いが…しかし、死兵を前提に立案された作戦など… そのような兵法の外道を避けるための参謀ではないのか? いったい何のために!……、いや、済まない、今のは忘れてくれ…」 正しい故に苦悩する男に、堂々と誤る女は笑って答える 「まあ忘れよう、そして忘れてくれるな、私は「戦争屋」だぞ?勝ちも負けも生も死も全てが戦争だ 勝ち戦しか楽しめないような奴は、戦争屋などとは名乗れないな むしろ、死を感じる負け戦こそ楽しくてしかたがないのだ 「戦争屋」とは 戦争が楽しくて好きで好きでたまらない、止められない そんなどうしようもない、ろくでなしの事だよ、そんな生き物の事を気に病んでくれるなや」 そんな女の態度に慣れている黒埼は苦笑と共に答える 「好きで戦争して好きで殺しあう女だ、だったら好きに死にゃあ良いさ まあ、ぶっちゃけ、お前が死のうが生きようが、俺はど〜でも良いんだがな、問題はお前だけじゃない、実力者の刀岐乃君には滅多な事は無いだろうが,クレージュと月の二人は問題だ 若い二人を殺したくない」 「ああ、懐かれてるもんなお前、「くろさま〜〜♪」って、なに?そっち目覚めた?近寄るなホモ、あ,後,マリアの姐御にもばらして良い?」 「やかましい,誰がそんな話しをしてるか,あくまで一般論として」 「一般論として可愛いよな,あの子、性別の壁を乗り越えそうになるのも良く判る話だ」 「だ〜〜か〜〜〜ら〜〜〜〜〜〜!!」 「いいか黒崎、良く聞け、この世の人間の半分は同性なんだぞ? 世界の半分をただ「性別が同じ」という理由だけで恋愛の対象から除外するのはいささか傲慢が過ぎるとは思わんかね? 愛とはもっと自由なものであるべきだ、私はそう信じているよ」 「佐倉まで,なに言ってやがる!!問題はそうじゃねえだろ!!」 流石にマジ切れはじめたので山崎と佐倉は黒埼いぢりを修了する 「判ってるさ,心配するな,あの二人は私が守る…戦争も戦死も私の趣味だ,趣味に人を巻きこむつもりは無い」 急激な変化についていけ無い黒埼は,微妙な表情のまま,言葉を紡ぐ 「…急にシリアスモードになりやがって…頼む…そして,済まん」 山崎はにやりと笑うと,黒埼のグラスに酒を注ぐ 「気にするな,これも趣味だ ボトルは半分残す、帰って来たら祝杯に,帰って来なかったら葬式で飲め、何時もの儀式だ」 そう言うと山崎は自分のグラスを空けた 偵察部隊が出発したのは翌日の朝である