越前藩国の摂政、黒埼紘の開発した(というかなんというか)電子妖精『優填-UTEN』は初陣に向けて張り切っていた。 まぁ、電子妖精の立場に言わせれば、いつも内政のお手伝いばっかりしているから、たまにはお外で遊ぼうという、そんな張り切り方であるのかもしれないが。 『あ、あの人。面白い髪型ー』 「ちょ、ちょっと。優填!どこ行くの!あなたの相手は自動人形でしょ!」 今回彼女を操る大役(っていうかぶっちゃけ監視役)を仰せつかったのは越前藩国でも古参の犬士、「菜輪 奈衣」さんである。 『だってー』 「だってじゃないって!ほら、人形、人形!あれも面白そうだよー?」 『え〜?わ〜おにんぎょー』 優填は奈衣さんの誘導にあっさり引っかかってくれた。 仮にも電子技術の粋を集めたハッキング用プログラムとしてどうかと思われる脳の小さそうな反応。これが『優填-UTEN』の持ち味だ! ところは変わって九州の戦場、その一角。 ニューワールドの軍勢を監視する自動人形を制御する人工意識体は自らを呼ぶ『声』を感知した。 『おにんぎょーさーん』 <What?> 『あなたの制御系は電子妖精『優填-UTEN』にハッキングされましたー。このプログラムを削除しますか?』 <!?YES!> 『はーい、あなたの制御系を削除しマース』 にししと笑いながら言う <NO!!> 『はーい、『優填-UTEN』を削除しませーん』 <OH、MY…> 人工意識体は自らと自動人形間のつながりが絶たれていくのをただ見守るしかなかった・・・ 戦場のあちこちでこの光景は繰り広げられていた。 なお、この日、戦場に舞い降りた妖精は、奈衣さんが目を離したすきに遊びに出かけてしまい、それから三日の間に各国の情報分野に様々な伝説を残したのだが、それはまた別の話……