これは、無名世界で昔から語られてきたおとぎばなしの一つである。 -------------------------------------------------------------------------------  むかしむかし、このせかいには、いじわるなかみさまと、そのけらいのてんしたちと、にんげんたちがいました。  かみさまもてんしも とてもきれいでつよかったので よわくてみにくいにんげんたちを ばかにしていました。  いじわるなかみさまは いつもにんげんたちにいじわるしていました。  おてんきをわるくしたり びょうきをはやらせたりして にんげんたちのこまっているすがたをみるのがだいすきだったからです。  てんしたちにも にんげんをいじめるようめいれいして にんげんをじょうずにいじめるほどほめました。  あるとき わかいてんしのひとりが にんげんをとてもじょうずにいじめるほうほうをおもいついて にんげんたちのすむむらにでかけました。  にんげんのしょうねんにばけたてんしは にんげんたちにさいしょいろいろなことをおしえました。  たべられるきのみや くすりになるくさのみわけかた。  あたたかいいえのつくりかた さかなやどうぶつのつかまえかた あんぜんなひのつかいかた。  にんげんたちはみんな てんしのばけたしょうねんに おれいをいいました。  てんしはこころのなかでにんげんたちをわらいます。  ばかなにんげんたち おまえたちをいじめにきたぼくに おれいをいうなんて。  そんななか ひとりのしょうねんがまえにでて てんしのばけたしょうねんに ききました。  なぁ それじゃあ もしかして■■は■■■なのか?  てんしのばけたしょうねんは すこしだけかんしんしました。  それは にんげんにはむずかしいだろうとおもっていたからです。  でも まわりのにんげんは どうしてそんなことをきくのかと ふしぎそうなかおです。  どうやらかしこいのは このしょうねんだけだときづいた てんしのばけたしょうねんは しょうねんにききかえしました。  そのとおり、きみのなまえは?  しょうねんはこたえます。  ぼくのなまえはふぃがろ。  そうか。  てんしのばけたしょうねんは そういって ふぃがろのことをじっとみていました。  ふぃがろとなのったしょうねんは なにか こまったかおでいいかえしました。  ・・・こっちがおしえたんだから きみのなまえもおしえてくれないか?  あと あんまりみられるとはずかしいよ。  てんしのばけたしょうねんは すこしかんがえていいました。  ぼくのなまえは しっくざーる。よろしく ふぃがろ。  それから ふぃがろはてんしのばけたしょうねんに いろいろなしつもんをしました。  おしえたことをすぐにおぼえて そこからあたらしいことをかんがえる かしこいふぃがろに てんしのばけたしょうねん しっくざーるもおもしろくなって いろいろなことをおしえました。  このせかいがまるいたまだということ。  おひさまとおほしさまがおなじものだということ。  そうするうちに しっくざーるも ふぃがろからいろんなことを おしえられました。  にんげんたちの もののかんがえかた。  にんげんたちできること できないこと。  そしてふぃがろがつくってくれた ごはんの おいしさです。  てんしはものをたべるひつようがないので それがどれだけすばらしいものかをしりませんでした。  てんしのばけたしょうねんは かりのときがきても ふぃがろだけはたすけてやってもいいかと おもいはじめました。  おもいながらも にんげんたたちをいじめるためにじゅんびをつづけます。   しっくざーるは にんげんたちにおしえはじめました。  このせかいには かみさまがいること。  にんげんたちが くるしむのは かみさまのいじわるのせいだということを。  にんげんたちは いじわるなかみさまにはらをたてました。  てんしのばけたしょうねんは さらにいろいろなことを おしえました。  ずっとずっときたのさむいさむいところにある かみさまのすむばしょ。  そこへのいきかた。ひつようなふねのつくりかた。  そして たたかうためのぶきのつくりかた。 にんげんたちは いじわるなかみさまと たたかうためのじゅんびをはじめました。 てんしにはみじかく にんげんにはながいじかんがたち たたかいのじゅんびがすべておわりました。  おおきなふねがなんせきもつくられ たくさんのゆみとやとけんとやりがつくられ たくさんのおとこたちがたたかいのれんしゅうをして へいしになりました。 そのなかには ふぃがろのすがたもありました。 しっくざーるはとめられませんでした。 なぜか むねが ちくり といたみました。 たくさんのへいしが たくさんのぶきをもち おおきなおおきなふねにのりこみました。 おおきなふねは おおきなおおきなうみをこえ あついひざしをこえ つめたいあめかぜをこえ やがてかみさまたちのすむ おおきなおおきな おしろにのりこんでいきました。 でも いじわるなかみさまたちと にんげんのへいしたちのたたかいは はじまりませんでした。 はじまったのは いっぽうてきな かりでした。 へいしたちのけんはとどかず へいしたちのやはとおらず てんしたちとかみさまのなげつけるひやかみなりは へいしたちをよろいごともやしてしまいました。 たすけてくれ。 しにかけた にんげんのへいしが しっくざーるにてをのばします。 でもしっくざーるはうごきません。 かみさまは いいました。 もういいだろう。 しくざりえる。 ほんとうのことを おしえてやれ。 そのしゅんかん しっくざーるとなのっていた しょうねんは てんしのすがたにもどりました。 にんげんたちは おどろきました。 おまえ おれたちを だましたのか。 なぜだか しっくざーるはむねがいたいと おもいました。 おどろいている にんげんたちに ふたたび ひやかみなりがなげつけられました。 にんげんたちは あっというまにかたてでかぞえられるくらいのかずになりました。 のこった にんんげんたちは それでも たたかおうとしました。 そのとき。 あるへいしのすてみのこうげきで てをすべらせたてんしのてから かみなりが しくざりえるにむかってとんでいきました。 むねがいたいのはなぜかとかんがえていた しくざりえるはおどろいてしまい うごけません。 しくざりえるに かみなりがあたるすんぜん だれかがしくざりえるのまえにとびだしてきて かみなりにうたれました。 それは ふぃがろでした。 ふぃがろは しくざりえるのぶじなすがたをみると いいました。 きみがぶじで よかった。 しくざりえるはたずねます。 どうしてぼくを たすけたんだ。 ぼくはきみたちをだましていた てきなんだぞ。 わからない。 そのことには おどろいたし おこってもいるはずなんだが。 でも きみがあぶないとおもったら かってにからだがうごいたんだ。 そして きみがしななくて よかった と おもったんだ。 だから もういちど いうよ。 きみがぶじで よかった。 そうして さいごまでいきていたふぃがろも しにました。 こうして にんげんたちはまけました。 よくやったな しくざりえるよ。 おまえは すごいやつだったんだな。 ぼくたちにかてるなんてかんがえた ばかなにんげんたちを やっつけるのはおもしろかったよ。 おまえがてんしだとしったときの あのかおもおもしろかった。 でもにんげんたちは ほんとにばかだったな。 とくにあのさいごのおとこ じぶんをだましていた おまえを かばうなんて ほんとうにばかなことをしたよな。 かみさまも ほかのてんしたちも くちぐちにしくざりえるをほめました。 なのにしくざりえるは なぜだかちっとも うれしくありませんでした。 どうしてだろう? しくざりえるはかんがえました。 ながいながいじかん かんがえました。 そしてきがついたのです。 ふぃがろはばかじゃなかったと ばかなのはじぶんだったと。 しくざりえるはなきました。 ないて ないて なきつくしたしくざりえるは ちかいをたてました。 ぼくは にんげんをまもるものになろう と。 そうすれば あのおとこは ぼくのともだちは てんしにだまされてしんだ ばかなやつとはいわれなくなるから。 にんげんをまもるものを まもってしんだ ひーろーになれるから。 しくざりえるは かみさまのたからものをぬすみました。 それは ときのほうじゅ。 じかんを あやつることができる まほうのたからものです。 そして いじわるなかみさまと ほかのてんしたちにたったひとりでたたかいをいどんだのです。 しくざりえるはなんどもころされました。 でも そのたびに ときのほうじゅのちからでよみがえり たたかいつづけました。 いじわるなかみさまは おどろきました。 ときのほうじゅのちからでいきかえるといっても きずついたときのいたみがきえるわけではないからです。 けんできられ やりでさされ うたれ もやされ こおらされ かみなりにうたれて。 そのたびに ものすごいいたさをかんじているはずなのに。 しくざりえるは ひめいをあげません。 どんなにいたくても つらくても くるしくても すぐにたちあがって たたかいをつづけました。 あいつは さいごまで なかなかった ひめいをあげなかった。 だれかをまもって たたかった。 だったらぼくも たたかえる。 いじわるなかみさまは そのさいごにてんしにのろいをかけました、 それは てんしやかみさまにとって しぬよりもおそろしいのろいでした。 てんしは にんげんになっていました。 てんしだったにんげんにはもう そらをとぶことも かみなりをだすこともできません。 ときのほうじゅのおかげで ほんのすこしじかんをあやつることだけはできましたが それもたいしたことはできそうにありません。 てんしだったにんげんは かみさまたちのすんでいたおしろをでて どこかへいってしまいました。 それから ながいながいときがすぎました。 にんげんたちは、いじわるなかみさまのこともわすれてしまいました。 でも、ふぃがろというえいゆうが、にんげんをまもるものをまもるためにたたかったというおとぎばなしは、いまでもせかいのあちこちでいいつたえられているのです。 めでたしめでたし みなさんにだいじなことを こっそりとおしえましょう。 じつは てんしだったそのにんげんは いまでもこのせかいのどこかで いきているのです。 そして にんげんのてきにであうと こういうのです。 「そこまでだ、人類の敵よ。  我は人類の守護者。  我が友、《あの不思議にして万能の》フィガロの願いによりてここに来た。」 そうやって とものめいよを そして にんげんたちをまもるために いまもせかいのどこかで たたかっているのです。 こんどこそ めでたしめでたし