情報戦行為:汎用 「状況、どうだ…?」 「今回はばっちりです。この前みたいに無効化なんてさせませんよ」 「このシステムは徹夜で藩王様と摂政殿が手をかけていたそうだな?」 「ええ、そのようです。お二人ともぐるぐるになりながら、作業されてましたよ」 「ぐるぐる…?」 「ごほんごほん!」 言いかけた後ろからわざとらしい咳ばらいの音が聞こえて、オペレーターは顔を青くした。 当の摂政本人が後ろで仁王立ちしていたのだ。しかし、摂政はと言うと、オペレーターに特に何も言うことなく、自分用の端末が設置された座席にどかりと腰をおろした。 その顔はこのところNW全土を網羅する巨大データベース網『文殊』の開発に追われていたせいか、頬が削げ落ちている。 「黒埼摂政。お疲れ様です!」 思い出したように挨拶するオペレーターに苦笑を浮かべながら、摂政は自分の端末を開いてナショナルネットに接続した。理力を利用した仮想インターフェイスが周囲に展開し、必要な情報の映像がまるで魔法のように球上に展開される。 その瞬間、周囲が息を飲んだ。 凄まじいスピードでコンソールを刻む音が鳴り響く。 手元のコンソールを操作しつつ、他の者ではおよそ捌ききれないような膨大な情報を処理するその様は、たしかに電脳摂政の名に相応しい。 情報技術を持つ者でも特に優れた技術を持つものを越前では機術師と呼ぶが、彼のその姿はまさにそれであった。 皆がその光景に見とれていたのも一瞬。その直後、けたたましい警報が響き渡る。 警戒網に敵が引っかかったのだ。 「敵が来たようだな。…第一種戦闘配備!これより、情報戦を仕掛ける。敵の目という目、耳と言う耳を片っ端から潰してやれ」 『了解!』 かくして、目に見えぬ戦場を舞台にした戦闘がはじまる…。