「総員、第一種戦闘配備!」 摂政・黒崎紘の怒号が響いてそれぞれが持ち場に着く。 「敵の進行ルートを予測。パターンABCD、それぞれに2から3のバリエーションを算出」 キーボードを叩きながら次々と指示を出していくのは、藩王・セントラル越前その人。 「成功確率はA-3、B-1、A-2、D-2の順。イレギュラー要素が強いのはB-2とD-1」 Wishの表情が普段のやさしいお姉さんから、厳しい参謀のそれへと変わる。 「リアルタイムのプログラム制御は任せて」 冷静に、しかし決意をこめて朱居まりあが宣言する。 「高速思考ルーチン開放!デヴァイスON。カモフラージュプログラム起動準備完了」 ハッカーたちがそれぞれの端末の前に陣取り作戦開始の時を待つ。 『通信システム、異常ないですか?』 クレージュが自分の通信端末からほかのメンバーに声をかける。 『通信周波数は10分ごとに8ずらします。くれぐれも情報の取りこぼしがないように』 刀岐乃がそう宣言して、予備の通信端末を確認し、使えないものに大きく印をつける。 『同期とれたよー』 いつもほど抜けてはいないがやっぱりどこか間延びした調子で椚木閑羽がフェイクトモエとの通信同期に成功したことを告げる。 『向こうからは通信させるな。万一電波を拾われたら作戦が無駄になりかねん』 通信機材を積み上げた中から佐倉真の声がする。 『いっそ別の周波数で偽の通信入れてもらったらどないや?』 周波数の設定を確認しながら鴻屋心太が提案する。 『名案ではあるが向こうの準備が整ってないだろ』 次々とさまざまな機材の整備を続けながら夜薙当麻がそれに応じる。 『いくら奇襲といっても危険に命さらしてる中であれこれ要求するのは酷ってもんだ』 つづけて答える不破陽多も、数々の機器の無数のプラグを抜いたりさしたりせわしない。 『ま、全員ができることをするだけさ』 空木虚介が刀岐乃の手から印のついた機材を受け取り早速修理を開始する。 ハッカーではない者たちが、ハッカーたちが作業に専念できるよう様々な形でサポートの位置につく。 「作戦開始10秒前……。3、2、1、アタック!」 すべての者が、勝利を目指して、動き出した。