「これ会議の資料に追加してください」 「あそこへの連絡手段はどうなってる?」 「通達は済んでるか?」 越前藩国、特に藩王の館は、あわただしさに満ちていた。 戦いに備えて指示を飛ばす藩王と参謀。 それに各々の専門分野で応える国民たち。 それに混じってひときわ小さい体が、館とその周りをぐるぐると走り回っていた。特に専門の仕事が出来るわけではない閑羽が、各人からお使いだの伝言だのを託されて我が任務とばかりに張り切ってるのだった。 「これ佐倉くんとこにもってって!」 Wishから白い封筒を渡される。 「この紙束まとめて藩王様にハンコ貰ってきて!」 それを持って佐倉のところに行くと、今度は分厚い紙の束を渡される。 「黒埼、探してきて!」 藩王たるセントラル越前にハンコを貰ってる間に黒崎を探しに行く。 「まりあさんにご飯持っていって! あの人仕事に夢中になると食べるの忘れるから!」 藩王が探してることを告げて、まりあ女史に運ぶ途中だったお膳を受け取り、彼女の作業場へ向かう。 そんな調子で、閑羽は館の中をあっちへこっちへと走り回っていた。 廊下の曲がり角でクレージュとぶつかってお茶まみれになってみたり、タオルで灯萌になでくりまわされてみたり、服が乾くまでと借りた刀岐乃のスカートの裾を踏んづけてすっころんでみたり、騒々しいことこの上ないという問題もあったが。 戦いのときが近い。 戦いは怖くてイヤだけど、何もしないでいるのはもっとイヤだ。 恐怖と不安を紛らわすために、高まる緊張をほぐすために、勝利を勝ち取るために。 今はまだ、こんなことしか出来ないけど。 みんなで明日を迎えるために。 みんなの明日を創るために。 みんなのために。 自分のために。 今は、できることを出来限りの力でやるだけだ。 事前準備が一段落して、館が緊張をはらみつつも、つかの間の安息に包まれる。 疲れてすっかり寝込んだ閑羽のおでこに誰かの手で「がんばりました」のハンコがぺったりと押してあったのは、また別の話。